2019年10月28日

パッシブデザイン7地域モデルとは

2019年グッドデザイン賞を受賞した敷島住宅「近江西、風の通り土間の家」。
弊社の新商品プロジェクトチームと滋賀県立大学環境建築デザイン学科・金子研究室との共同研究により「これからのパッシブデザインの家とは」を研究した成果のひとつです。
文化や歴史といった時間的要素の評価、CFD解析などの現代ツールの活用を通じて地域性の豊富化・視野の広い取り組みに昇華させていることが評価されました。

「近江西、風の通り土間の家」については、こちらの記事で詳しくご紹介しました。
2019年度グッドデザイン賞受賞~近江西、風の通り土間の家(リンク予定)
近江西、風の通り土間の家レポート~2019年度グッドデザイン賞受賞~(リンク予定)

この記事では、「そもそもパッシブデザインってなに?」「7地域モデルってどういうこと?」というポイントを中心にご紹介します。

パッシブデザインとは

パッシブデザインとは、太陽光や太陽熱などの自然エネルギーを活用し、快適で省エネな家をつくる手法です。

例えば、季節による太陽の高さを考慮して軒の長さや角度を調整し、夏は日を遮り冬は日が入るよう調整する。季節によっては日差しが強すぎる南ではなく、安定して光を取り込める北の窓を活用し、光を室内に届けるといった工夫を施します。

「こうすればいい」という回答は一つではなく、四季の温度差など地域環境に合わせたパッシブデザイン、隣接する家などのその敷地の周辺環境にあわせたパッシブデザインを考えることが重要となります。

パッシブデザイン7地域モデル

今回、パッシブデザインを考えるにあたり「単に省エネルギーだけではなく、環境の潜在力を活用した住宅を目指す」ということで、当社分譲地のある京阪滋の地域を7つに分けて調査が進められました。

上図は、色分けされた地域が現在の都道府県、その上に廃藩置県が行われる前の旧国名が重ねられています。
この区分からエリアを選定し、弊社の分譲エリアを重ね合わせて出されたのが近江東・近江西・山城北・山城南・摂津北・摂津南・河内の7つの地域です。

 

 

調査は気候・地形・文化・建築・フィールドワークの5つの視点で行われました。

一般的なパッシブデザインで考慮される気象環境や地形だけでなく、文化や地域の歴史的建築といった要素を取り入れたところが「パッシブデザイン7地域モデル」の特徴なのです。

気候

気温・湿度・風向風速・日照量の4要素が調べられるパッシブ気候図を参照。さらに年間降水量、植生が調査されました。

隣り合った地域でもそれぞれに特徴があることが一目でわかります。

地形

緯度経度と平面・断面・その他の特徴からなる地形が調査されました。

琵琶湖や河川、海の影響が見てとれます。

文化

人工、家族形態、地価、公園、土地利用が調査されました。

地価の高い地域は単身世帯が多く、低い地域は3人以上の家族の割合が増えるなど、地域差がハッキリとわかります。

建築

伝統建築・保存地区、伝統集落が調査されました。

ひとくちに伝統的な日本家屋と言っても、比較すると地域差が見いだせます。

フィールドワーク

今回、実際に建物を建てる近江西をさらに上阪本と下阪本に分けて、2018年の夏に現地でのフィールドワークが行われました。

上阪本では、越屋根(こしやね)、虫籠窓(むしこまど)、土間空間、低い軒などの特徴を備える民家が現存しました。

こちらは下阪本。越屋根、虫籠窓、ベンガラ塗の建具、土間空間を備える民家がありました。
ベンガラ塗とは塗料の一種で、酸化鉄を成分とする赤い顔料。滋賀県の各地で見られます。

このようにフィールドワークで集められた、各地に根付いた建築要素を「デザインコード」に落とし込む作業が行われました。

近江西のためのパッシブデザイン

今回の調査と研究により、パッシブデザイン7地域モデルから近江西のためにデザインされた住宅が「近江西、風の通り土間の家」です。

計画周辺地域

近江西地域は滋賀県の南西に位置し、琵琶湖に近い平地には幹線道路を中心に商業ビルや新興住宅地が広がっています。
かつては坂本城の城下町として栄え、今も安土桃山時代からの石積みが残る歴史のある地域です。
昼には琵琶湖から、夜には比叡山から風が吹く気候特性を持つ地域でもあります。

近江西デザインコード

近江西のデザインコードは、低い軒、越屋根といった屋根要素のほかに、袖壁(そでかべ)、縁側(えんがわ)、土間、平入りが挙げられます。

今回の近江西モデルでは「越屋根」と「土間」に注目したコンセプトが提案されました。

「近江西、風の通り土間の家」のポイント

コンセプトを元に実際にデザインされたのがこちら。

モデルハウスの外観です。
フィールドワークで見られた瓦屋根、格子、虫籠窓、越屋根といった要素を取り入れ、2階の軒高を抑えることで、道路側への圧迫感を押さえています。

 

越屋根を元にデザインされたパッシブルーフは、伝統的要素である越屋根に現代のテクノロジーをプラスしたものです。
特徴的な形は、作成した3パターンの屋根の形からより効果の高い形をシミュレーションにより導き出しました。

虫籠窓を元にデザインされたのがMUSHIKO窓。
伝統的な虫籠窓は平面的ですが、外壁の連続性を持たせながらも内側の窓を開閉できるよう、また玄関に対して人を迎え入れる形態となるよう傾きをつける工夫がなされています。

 

モデルハウスの名前にもなっている「風の通り土間」。
光・風・人の動きなど多様な要素が重なる家の中心となっています。

 

「近江西、風の通り土間の家」の詳しい間取りや設備は、こちらの記事へどうぞ。
2019年度グッドデザイン賞受賞~近江西、風の通り土間の家(リンク予定)
近江西、風の通り土間の家レポート~2019年度グッドデザイン賞受賞~(リンク予定)

まとめ

今回は、2019年にグッドデザイン賞を受賞した「パッシブデザイン7地域モデル」を「パッシブデザインとは」「7地域モデルとは」というポイントでご紹介いたしました。
興味を持った方は、ぜひ実際にモデルハウスを見学いただき、パッシブデザイン7地域モデルを体感してください。
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